耳に心地よい、波の音。
それは、何もかもを押し流して、遠い夢へとさらってゆく。
肌に心地よい、風の唄。
それは、何もかもを押し包んで、遠い夢へと隠してしまう。
だけれども、その波風に君達までがさらわれるのは悲しいことだから。
どうか愛しい子達よ、君達の愛すべき者たちの手だけは、決して離さないでおくれ。
繋ぐその手は、必ずや、君達をここに繋いでくれる絆となるはずだから。
―ある冒険者の死に際の詩―
これは幾度目かの転機から、ほんの少し時を振り返る、回顧の物語。
未来、勇敢な冒険者となる者達を追った、もう一つのNepheshel。
―― それは、終焉よりも十年ほど昔のこと。
<Nepheshel異聞 『霧の島の追想綺譚』>