「霧の中の追想奇譚」

著者:皆川 新茶

★プロローグ
 ★第一話

プロローグ

 耳に心地よい、波の音。
 それは、何もかもを押し流して、遠い夢へとさらってゆく。
 肌に心地よい、風の唄。
 それは、何もかもを押し包んで、遠い夢へと隠してしまう。

 だけれども、その波風に君達までがさらわれるのは悲しいことだから。
 どうか愛しい子達よ、君達の愛すべき者たちの手だけは、決して離さないでおくれ。

 繋ぐその手は、必ずや、君達をここに繋いでくれる絆となるはずだから。
                      ―ある冒険者の死に際の詩―

 これは幾度目かの転機から、ほんの少し時を振り返る、回顧の物語。
 未来、勇敢な冒険者となる者達を追った、もう一つのNepheshel。

 ―― それは、終焉よりも十年ほど昔のこと。

<Nepheshel異聞 『霧の島の追想綺譚』>