1人の英雄と伝説の魔神

著者:Librrow Aquaride

今、この世を賭けた戦いがひそかに繰り広げられていた・・・。
1人の男性、そして魔神らしき3人の女性。
お互いに剣を持ち、左右に広げられる羽根とひとつの丸い光。
限りなく遠い地の果てに辿りついた英雄は、創造者と戦っていた・・・。


「リトよ。汝は私に勝つことはできぬ。私の創った武器では何もできぬ」
「うるさい!やってみなければわからないじゃないか!」
かれこれ戦い始めてから数時間は経つ。リトはデミウルゴスに対し強気な発言をした。
しかしファル、ティララ、ディーヴァの精神力は尽きており、己の剣でしか頼りにできない状態だった。
「汝には女神の加護も受けられぬ。水龍も風を起こすこともできぬ。闘神の技も使い切ってしまった・・・。汝は重荷を背負っているだろうが、災難だな」
リトは息をきらしながら言葉を返した。
「重荷・・・?ふざけるのもいい加減にしたほうがいい・・・!ここまでこれたのも、みんなのおかげだ!俺の大切な仲間が重荷な訳ないだろう!」
創造者デミウルゴスは冷たく言い放った。
「何もできぬ魔神など、魔神ではない。知っていたか。汝にこの3人を会わせたのは私だ。汝はいずれ死ぬだろう。この3人とな・・・」
「っ・・・・・・!」
リトはもう話す気力も残っていない。このままあっけなく敗北の道に行ってしまうのか。
「みぃ!リトは十分頑張ったの・・・!魔法が使えなくても・・・、ファル達は戦うの・・・」
「そうよ・・・。私達はリトといろいろな思い出を作ったわ・・・。あんたの思い通りにしたら、私達が許さないわ・・・!」
「そうだ・・・。どんな奴にも武器はある。自分の武器を・・・。自分の武器を折ってまでも・・・、戦わなければならない!!」
よろけながらもそれぞれの武器を握り直した。ファルは杖を持ち、ティララは槍を、ディーヴァは2つの剣を握り直した。
「みんな・・・。ありがとう・・・。聞いたかデミウルゴス!これが俺達の結論だ!!」
デミウルゴスは黙っていた。くだらない、という顔をしていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「みぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
4人は声を張りあげた。闘志がみなぎった声が辺りに響く。
「いくぞ!」
「はい!」
ファル、ティララ、ディーヴァはリトを囲むようにくっついた。リトの掲げたウェルタディールに自分の持っていた武器が触れた。
お互いに武器をクロスさせた体制になった。
「汝らは何をやっても無駄である!」
デミウルゴスの声も4人には聞こえない。ブーストを使う精神力がなくても、「意思」がある。意思は無限でしかも尽きない。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「みぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
自分の武器を掲げ、クロスさせている4人から眩いオーラのようなものが光り始めた。
最後の力、そして無限の意思をデミウルゴスにぶつけようとしているのである。
「デミウルゴス!これが本当の『仲間』だ!」
4人は同じタイミングでジャンプした。そしてデミウルゴスを襲う。クロスさせた武器はデミウルゴスを覆っている光に衝突する。
4人の姿はオーラで彗星の輝きに見える。
「何?そんな・・・、馬鹿な・・・」
デミウルゴスがそう言ったとたん、
バキィン。
何かが砕けた音がした。デミウルゴスを包んでいた光が砕け、そして4人が持っていた武器が折れた音だった。
4人は衝突の衝撃で地面に叩きつけられた。
「やるな・・・。しかし、汝の負けである」
「くっ・・・」
ものすごい衝撃とぶつかりあったはずである。デミウルゴスの包んでいる光は完全に砕けていなかったのだ。ただ表面を少し砕いただだったのだ。
4人の武器は折れてしまった。もはや戦う術もなくなった。
「目の前にしてっ!ちきしょう!」
リトは地面を拳で叩いた。そこから血がにじむ。
「汝にはもう戦う術はないだろう・・・。汝に運命を授けよう・・・。この運命が、お前を狂わす素になるかもしれん・・・」
デミウルゴスはそういうと両手を掲げた。
まさか。
リトは慌てて後ろを向いた。無言で立とうとしているファル、ティララ、ディーヴァの姿だ。
その時だった。
「きゃああああああああああっ!!!」
「みいいいいいいいいいいいっ!!!」
「ぐわああああああああああっ!!!」
辺りは光に包まれた。優しささえも感じられる光が3人を飲み込む。しかし、リトには何の感覚もない。
「ファル!ディーヴァ!ティララ!」
リトは、3人が体中に裂け目ができて、そこから紅い血が噴きあがるのを見た。見るからに痛々しい光景である。
そして3人は光と共に消えた。
「おい・・・。冗談だろ・・・。戦いの途中に冗談はよしてくれよ・・・」
リトの瞳は凍りついていて、生きている者の目ではなかった。はは、ははは・・・。と訳のわからない笑いをしながら涙を流していた。
3人が消えた現実を飲み込めていないらしい。
「うわあああああああああああああああっ!!!」
リトが大きく泣き叫んだ。大事な仲間を、友達を、愛する存在をよくも消してくれたな、と心の中で唱えた。
瞬間、リトの周りに何か違うものがあった。
天空の星を思わせる、きらきらした光。まるでこんぺいとうを散りばめたように見える。
青白い光、ピンク色が混じっている光、紫白い光。
「私の意思で仲間というものを消した。魔神と言えども私にとっては創造物のひとつにすぎない・・・」
デミウルゴスが言い放った。リトは涙を流しながら答えた。
「確かに、貴様ならひとつの創造物だろうが、俺にとっては大切な仲間だ!それに・・・、貴様は消すべきものを消せなかった。何せ、貴様が創ったものじゃないからな・・・」
デミウルゴスは動揺を見せた。
「何?全て私が創ったもの。もちろん汝もだ。私が消すべきものを消せなかった・・・?たわいもないことをいまさら・・・」
「違う!貴様は何もわかっちゃいない!」
リトは声をはりあげた。
「貴様にもあるだろ!『意思、心、魂』が・・・。心が通じあっている仲間が初めて見えるもの!そうか、貴様には見えない・・・。永遠に・・・!」
リトの叫びに光が応える。
「ほほう。汝にはもう武器がないのを忘れていけない。想いだけでは私を超えることはできぬ」
「ああ。確かにそうだ。いずれは暴力だ。戦いだ。どちらかが死んで決着がつくのには変わりはない。だが、俺は貴様を倒す・・・!」
デミウルゴスは無言だった。そして、しばらくの沈黙が流れた。
「お互いに剣で勝負しようか・・・。どちらかが死んだらこの戦いは終わりだ・・・」
デミウルゴスは剣を創った。片手剣を右手に持つ。
しかしリトには武器がない。持っていた武器も折れてしまい使い物にならない。
「くそっ・・・」
リトはディーヴァのかって使っていた、折れた片手剣を拾った。折れたホーリーアークの剣。もう光はないが、聖剣に変わりはない。
「その剣でいいのか?」
デミウルゴスが訊く。
「情けはいらない!」
リトとデミウルゴスの剣がぶつかった。ものすごい光が剣から溢れる。
しかし折れた剣ではやはり勝てず、弾かれてしまった。
「やはり無駄である。汝はここで死ぬ運命なのだ」
「黙れ!」
リトはまた涙が溢れだした。

無理だよ・・・
俺はみんながいないと
ただの軟弱者さ・・・

うつむいて泣いていると、懐かしい声が聞こえた。
「みい!泣いちゃだめなの!」
この声にリトは顔を上げた。声の元は青白い光からだ。
「やはり私達がいないと戦うこともできないみたいだな・・・」
今度は紫白い光が答えた。
「私達は消えたわけじゃないわ。私達は永遠よ!」
ピンク色の光。
「みんな・・・」
それをデミウルゴスは
「どうした。悲しみのあまり思い描くようになってしまったのか」
冷たく言った。デミウルゴスには3人の魂とその声が聞こえないらしい。
「デミウルゴス!もう貴様には改心する気など全くないようだな・・・」
リトは折れたホーリーアークを捨てた。そして、左手を上に挙げた。
「みんな!俺に力を貸してくれ!俺は・・・、みんなの分まで超えてみせる!」
リトの叫び声に、光が反応する。光はリトの左手に集まり、具現化していく。
具現化されたのは、ひとつの剣だった。ピンク色、水色、紫色が彩ったとても美しい剣だった。具現化された剣を左手で握った。
「何?」
デミウルゴスは焦りの色を見せた。リトの持っている剣は自分が創った剣じゃない。
「デミウルゴス!うおおおおおおおおおっ!!」
リトが剣を持ってデミウルゴスに突っ込んだ。力ものすごく強くて、いとも簡単に包んでいた光のシールドを破ってしまった。
デミウルゴスが姿を現す。
しかしリトはそのまま前にのめり込もうとする。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
デミウルゴスも負けてはいなかった。自分の持っている剣で払いと落とした。
剣がぶつかる音がした後、リトは着地した。
デミウルゴスが剣を振りかざした。リトの正面に来る。
「くっ!」
その時、剣が意思を無視して動き出した。デミウルゴスの攻撃を受け止めたのである。これはディーヴァの意思によるものだった。
「えっ・・・」
内心リトは驚いた。
剣を持っていると、自然に傷が癒えていく。ティララの力である。
それに、剣は常に風を周りに取り巻いていた。ファルの力である。
「みんな・・・。よしっ!」
リトは勢いに乗って攻撃を続ける。もう疲れも痛みも苦しみもない。目の前にある硬い鏡砕くことが、自分の役目。
「汝は・・・っ!」
デミウルゴスが何かを言おうとして、止めた。あまりの奇跡を目にしたデミウルゴス、一番知っているはずの自分が思わず言いそうになった一言。

お前は神の子か。

という一言を。
デミウルゴスもリトの変わり様に後悔の色を見せた。
リトの攻撃を受け止め続けているが、いずれ自分に限界が来る。
「仕方あるまい・・・。汝も消えてもらおうか!」
「!?」
デミウルゴスの一言にリトは動揺した。同じように消えてしまうのか。リトの脳裏にさっきの悪夢が蘇る。
デミウルゴスは光を放った。優しくて残虐な光。
リトは思わず目を閉じた。しかし、展開は意外な方向へ転移した。
リトが目を開けると自分は無事だった。視界には横にした剣と光だった。
剣がまた動き出し、光の悪魔を受け止めていた。リトを避けるようにして、光は通り抜ける。
やがて光はなくなった。そして剣も自ら光を振り払った。
「何?そんな・・・、馬鹿な・・・」
デミウルゴスは慌ててしまっている。
「当たり前だよ創造者デミウルゴス。消したはずのみんな、そう。ファル、ディーヴァ、ティララという俺の大事な仲間がね」
「黙れ!」
「この剣は意志の剣さ。だから折れもしないし、欠けもしない。みんなの魂だからさ・・・」
リトは大きくジャンプした。デミウルゴスも受け止める体勢を作った。
「そして、これは絆でできたものだ!」
ざしゅ、という鈍い音がした。デミウルゴスの胸を貫いたのである。
「ぐっ・・・・・・」
リトは剣を抜いた。
「我の負けだ・・・。汝は我を超えてしまったようだな・・・」
「ああ、俺1人がやったことじゃないがな」
リトは自分の剣をまじまじと見た。水色、紫色にピンク色の色彩がとても美しい。
「汝が・・・、創造者となり・・・、世界を創って・・・、維持してほしい・・・」
「ああ。でも俺は暗い世界は創らない。平和で綺麗な世界を創って平和なまま生きたいからな」
「ありがとう・・・」
デミウルゴスは光と共に消えた。


リトは大きな大陸にいろいろな国を創った。そして、ひとつの小さな島に国を築いた。
リトは普通の人間に紛れて生活していた。物が溢れ、何一つ不自由のない暮らし。
しかしリトには耐えられなかった。かつての創造者と戦ったときに3人の魔神の想いが合わさった剣。
ものも言わず、取り巻いていた風ももうない。怪我したときに握っても傷は癒えない。危ない目に遭っても勝手に動いて受け止めてくれるということもない。
「みんな、苦しいだろ・・・?俺が創造者になれたよ・・・。今度は俺が、お前を助けてやる・・・」
リトが剣をかざすと、3つの光が窓を通して外に逃げていった。3人は普通の人間に紛れながら、いや、不老不死以外人間に変わりない人生を送ってくれることだろう。
リトは創造者になり、神になった。周りはリトの存在を知らない。それでもリトは見えないところでいろいろなものを創っているに違いない。


ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・。
桃色の髪をした女性が椅子に座らずに風景を見ていた。
家庭教師で生徒の家に向かう途中だった。
見る度に変わっていく風景をまじまじと見つめていた。
「次は『旗幟峰西』〜」
「あ、目的の駅を通過しちゃったわ・・・」


「部長。今日は用事がありますので退社してよろしいでしょうか」
「いいぞ。帰りなさい。それにしても君、常にナイフらしき物を持って何をするのかね」
「ありがとうございます。えっ、ナイフですか?えと・・・、その・・・。料理器具を持っていないと気がすまないので・・・」
「そうか」
オフィスから出たみつ編みの女の人。下に降りずに屋上へ向かった。
屋上に見える風景はネオンサインと星の光で幻想的だった。


「おはよー」
「あ、おはよー!」
「宿題やってきた?」
「あー!忘れちゃったの!」
「どうするのよー」
元気に学校へ向かう高校生。住宅街を元気に歩く。
鞄を持って、笑いながら学校へ行く。


3人とも、平和に暮らしている。

あとがき

エターナルメモリーを手に入れた時に思いつきました。1人の魔神でもこんなに大きな力なのに3人だったらとんでもないことになるのでは・・・、と。
元々、自分のオリジナル武器「Lovers Killing」というのをネフェ化したものなんです。どうしても出したかったので。という訳で見事実現です。
実際、「人+光+水(風)+闘(闇)+神+水棲=奇跡の剣」という性質です。なので実在したら恐ろしいことになっていたはずです・・・。
しかし構成がいい加減ですねー。展開もいい加減です。(おい)本当は複数章作ろうと思ったのですがずるずると暗いほうへ、暗いほうへ行きそうだったので・・・。
ひたすら暗かったこの話ですが、自分なりに明るいほうかもしれません。ありがとうございました。