闘神の憂鬱

著者:天凪 悠

私なりの、文中での「」の使い方を、一応説明しておきます。
「」=キャラクターの台詞
()=キャラクターの心情
{}=筆者が文中で強調したい部分
読むに当たって、{}は特に重要です。覚えておいてください。
また、この小説は、他の方々の作品と違い、100%オーバーでギャグ物です。
暴言と取られてしまう発言があるかも知れませんが、
そこは笑って許してください。(滝汗)
彼女は困惑していた。全てはつい数分前の出来事が原因だった。
耳に入ってくるのは、ティララの小言と、ファルの泣き声。
時折小さくリトの声が聞こえる。
耳の奥でそれらが交じり合い、何とも素晴らしい不協和音を奏でていて、気分が悪かった。



「ファルなの〜。よろしくね〜!」
「リトから話は聞いてたわ。よろしく。」
「あ、ああ…よろしくな。」
お互いに自己紹介をするファルとティララ。
見た目に寄らず不器用なディーヴァは、少々ぎこちない返事を返していた。

リトと共に探索に入った古城。そこで、2人ははあるものを見つけた。
調停のオーブである。
以前、何かの本で読んだことがあった。これがあれば、魔神どうしの力の干渉を
防ぎ、複数の魔神を同時に召喚することができるという。
「よし、早速試してみるか。」
「そうだな。」
リトが取り出した2つの壷――片方は水色をしていて、もう片方は赤かった――から
彼が呼び出したのは、まるで海のような青い髪をした少女と、
桃色の長い髪を結わえた女性だった。ここで初めて、
この3人はお互いに初めて顔を会わせのだ。
もちろん、あらかじめ他の2人がどういう人物なのか、それはリトを介して一応
知っていた。しかし、実際に顔を合わせてみると
やはり緊張してしまうのが普通なのだが…。

「ね、どうしたの?さっきから黙り込んでるけど……。」
「…あ、いや、何でもない。気にしないでくれ。」
「みいっ!リト〜。何だかディーヴァ、様子が変なの。」
「ん?どうしたんだ、ディーヴァ。具合でも悪いのか?」
「いや、本当に大丈夫だ。そ、その…気を遣わせて悪いな。」
明るい性格のティララは、こういう場合でも気さくに話しかけてくる。
そして、もはや人見知りなどと言う言葉を知らないファルは、挙句の果て
ディーヴァに抱き着いてくる始末だ。
(まずい…完全に浮いている……)
心のどこかで、ディーヴァは焦りのようなものを感じ始めていた。
一人どこかやりきれないものを感じ、メンバーの一番後ろを歩いていた。
「きゅいい〜?ディーヴァ、顔が真っ赤なの〜。」
不意にファルに声をかけられ、どきっとした。
「なんなのよ、もう〜。この、恥ずかしがり屋さん☆」
そう言って、ティララはディーヴァの額を人差し指で小突いた。
途端にディーヴァは、自分でもはっきりわかるくらいに赤面してしまった。
「も、もういい!私に構うな!!」
照れ隠しか、2人を怒鳴りつけ、彼女はつかつかと先へ言ってしまう。
「う〜ん……。リト、何なのよ?あれ。」
「普段はああいう感じじゃないんだけどなぁ……
もしかしてアイツ、結構不器用なのか?」
「ふいぃ…。」
(まったく、何が『恥ずかしがり屋さん☆』だ!)
気が付けば彼女の額には、大量の汗が流れていた。

世は『第1印象が大事』と言うが、全くもってその通りだ。
ティララとディーヴァ、こう言うわけで第1印象は最悪だった。
この時は、後にそれが大きな悲劇を生むことになるとは、誰も知り得なかったのである。
だからこそ「防ぎ様があるとは言えなかった」というのもまた事実だが……


ずかずかと先頭を歩くディーヴァが、魔物の気配を捉えたのは、それから数分後のことだ。
「……!リト、来るぞ!」
「わかった。ファル!ティララ!用意はいいか?」
「OK!」
「みぃっ!まけないの〜!!」
4人はそれぞれの武器を構え、現れるであろう魔物に備えた。
ほどなくして現れたのは、3体のラミア。
上半身が人間の女性の姿をしていて、下半身は蛇になっているという魔物だ。
「ふん、またお前達か……覚悟しろ!」
そういって真っ先に駆け出したのはディーヴァだった。
「ちょっ、ディーヴァ!?」
「ディーヴァ、無理はいけないの〜!!」
後ろで彼女を心配するリトやファルの声すら、今の彼女には雑音でしかなかった。
「トウッ!!」
間合いまで一気に踏み込み、右手に握り締めた剣をラミアの頭上へ振り上げた!
……全てはここが始まりだった。
ピタッ。
何故かディーヴァの剣が、当たる寸前で止まってしまった。
「……ディーヴァ?」
「……。」
リトの問いかけにも、ディーヴァは答えない。
何と、振り上げた腕をダラリ、と垂らしてしまう始末だ。
そのままおもむろに、リト達のほうへ向き直った彼女の瞳は、
生気がぬけて虚ろになっていた。
「……もしかして、これって……」
額を冷や汗が伝うリト。
「『魅惑の視線』……?」
こちらへ向けられた殺気に、たじろぐティララ。
「そうみたい、なの〜。」
あまり状況が飲み込めていないのか、声に緊張感がないファル。

刹那、風が吹いた……。

「ふ…ふふ…ふはははは……。」
いつのまにか3人の視界からディーヴァが消えて、
急に背後から怪しげな笑い声が聞こえた。
物凄い寒気に襲われて、振り向くティララとリト。
笑い声の主であるディーヴァは、こちらに背を向けた状態でただ怪しく笑うばかりだ。
そして、何故かファルは固まったまま動かない。
「……ファル、ちゃん……?」
カラン…。
ファルが手にしていた杖が、石造りの床に転がった。
…こてっ。
「お、おい!ファル!?」
何の前触れもなく床に倒れこんだファルを、リトは慌てて抱き上げた。
……意識がない。
「随分たちの悪いジョークね……。」
「ひ、ひとまず撤退だ!ディーヴァ、目を覚ませ〜!!」


……という訳で、なんとかあのラミア達からは逃れられたものの、
なんとか目を覚ましたファルは恐怖のあまり泣き止まなくなってしまい、
今は必死にリトがファルをあやしている。
で、当のディーヴァはというと……先ほどからティララにお説教されている真っ最中。
クドクドと続いている彼女の小言は、いつのまにか小1時間ほど続いている。
そして、ファルもまた同じくらいの時間泣き止まないでいた。
(なぜ私がこんな目に……)
やり場のない、何とも言えない思いがディーヴァの胸に込み上げてきた。
しかし、彼女にとって非常に嫌なこの状況は、
これから始まる悲劇の序曲でしかなかったのだ。


「大体なんでいきなり突っ走ったりするのよ!リトとファルちゃんも止めたのに!!」

(確かに、頭に血が上っていたとはいえ、あれは私が……)

「びええええ〜ん!いたいよ〜!!こわいよリトぉ〜!!」
「よしよし、いつまでも泣くんじゃない、ファル。
 ディーヴァも、悪気があってやった訳じゃないんだ。」
「びえええ〜ん!」
まとまりかけた考えを口にしようとしたところを、傍で泣いている
ファルに邪魔されてしまうディーヴァ。
「ちょっと!どうしてさっきからずっと黙ってるのよ!!」
「そ、それは……。」
リトは不幸にも、ちょうどその時にファルを泣き止ませる名案を思いついてしまった。
「(…よし、これだ!!)もし泣き止んだら、白クゥプレゼント!それでどうだ?」
「ひっく……白いクゥ……?」
「お前、確か普通のクゥしか持ってなかっただろ?」
「ひっく……ホントに?」
「泣いたらお預けだぞ?」
「みぃ〜!!リト、だ〜いすき〜!!」
{どうでも良い事だが、ディーヴァは、ティララが
 ファルの言葉に反応したのに気付かなかった}
『三日は歩けないな、多分……』
ファルにだっこぎゅ〜されながら、リトは自分の言った事に後悔していた。
「五月蝿い!!静かにしろ!!!」
(……しまった。)
後悔しても、もう遅いということぐらいは、ディーヴァにもわかっていた。
「ひっ、う・う・う〜。」
「ちょ、あ、あの、ふぁ、ファル、その、え、えと……」
(た、頼むから泣かないでくれ!)
突然のことに驚き、ろれつが回らなくなってしまったリトの願いも虚しく、
「びええぇぇぇぇ〜ん!!」
ファルは再び泣き出してしまった。
「ちょっとあなた……。何様のつもり?」
不本意ながら、ディーヴァはティララを怒らせてしまった。
彼女は腕を組んで、整った顔を怒りに引きつらせている。
「い、いや、これは、その……」
「いまさら言い訳なんて、本当に見苦しいわね!!全く、先が思いやられるわ……」

……カチン。

その瞬間、彼女の中で抑えていた感情が弾けた。
「……今、何と言った。」
「何度でも聞かせてあげるわよ!言い訳するなんて見苦しいって言ったのよ!!」
「……その一つ後だ。」
予想外の言葉に、一瞬ティララは困惑した。
「え…?先が思いやられるって……聞こえた?」

リトは、急にその場に殺気が充満したのを感じた。
「あの……2人とも?」

「こちらが黙っていればいい気になりおって!!」
「なによ、その言いかた!全部自分が原因なんじゃない!!」
「黙れこの年増女!!」
リトから禁句と警告されつつも、ディーヴァは
思いきりティララに罵声を浴びせた。
「言ったわね〜!!女男!!!」
やはり魔神と言えども、心のどこかで気にしている事を指摘されると、
腹の虫が収まらないものだ。
「……どうやら命がいらぬらしいな……。」
「あら、それは貴方のことじゃなくって?」
増大していく殺気に、このメンバーの中で唯一普通の人間であるリトは、
押しつぶされそうになってしまった。そして、彼の脳裏に悪夢がよぎった。
「ま、まさかお前達……!!」
もはや彼女達に、リトの言葉は届くわけがない。
「私を嘲ったこと、血の涙をもって後悔させてくれる……!!」
「灰になるまで燃やして、カーミラのコレクションに加えてあげるわ……!!」
ちなみに調停のオーブを見つけたこの日は、天の悪戯かはたまた悪魔の高笑いか、
リトがこの2人の壷の中にいる、『もう一つの彼女達』を倒した日であった。
{ちなみに『水龍ファルドゥン』は、未だに倒していない}
リトの悲痛な叫びも虚しく、眩いばかりの光がティララを包み、
ディーヴァは轟音と共に闇の闘神と化していた。
「城が崩れる〜〜!!」
かつて自分のものであった事を知ってか知らずか{恐らく知らない}、リトは叫んだ。
「びえええええぇぇぇ〜ん!!!!」
ファルはますます強くリトに抱きついて、逃走という彼の最終手段を封じてしまった。


〜エピローグ〜
悪夢から一夜明けた時のことだ。
「…2人とも、なにか言う事は?」
自分の部屋で椅子に腰掛け、気まずそうにベットに座っているティララとディーヴァに、
リトは問い掛けた。その姿は、額には包帯が巻かれており、左腕には三角巾、
残った右腕すら包帯が所狭しと走っているという、なんとも痛々しいものだ。
「その……ごめんなさい。」
「いいんだ……。悪いのは全て私だ。」
「どちらが悪いとは言わないけど……おかげで古城の探索が不可能になったぞ。」
『う……。』
2人の言葉が偶然重なった。

あの後、2人の壮絶な戦いに巻き込まれてしまった不幸なリトは、
後少しで脱出不可となる寸前で、泣き止み、決起したファルに助けられ、
命だけは失わずに済んだ。しかし、すでにその段階で2人の攻撃に巻きこまれた
リトは、辛うじて意識があるという状態。2人の決闘の結果は、最後の精神力で
ティララが放った流星がディーヴァに命中。それが決め手(つまり引き分け)となった。
精神力を使い果たし気絶しているティララは、リトを傷を治す事ができず
{ファルは自分の血をリトに飲ませようとしたが、リトは自分でそれを拒んだ。}
結果自然治癒を待つしかない、という悲惨な終幕となった。
{しかも偶然魔法石も尽きていた。ここまで惨めな結末が他ににあるだろうか。}
「まぁいいさ。お前達も、無事仲直りできたみたいだしな。
 なにより死者が一人もいない。」
「リト……それはちょっと笑えないわよ……。」
「現にお前が死にかけただろう……。」
2人の返事に、リトは思わず笑い出した。
それにつられて、ティララも笑い出し、ディーヴァも微笑んだ。
「みぃっ!2人だけずるいの〜!ファルだって頑張ったのに〜!!」
「はは、ゴメンゴメン。」
「リト、約束だよ!白いクゥに、普通のクゥも3つ着けるの〜!!」
「え…マジ……。」
「みぃ!だってファル、頑張ったんだよ〜!リトの体、とっても重かったの〜!!」
といって涙ながらに訴えかけるファルに、リトは根負けしてしまった。
「わかったよ……。ただし、ケガが治ってからな。」
「みぃっ!ファル、うれしいの〜!!」
(さらに5日は歩けなくなるな……合計8日か……)
リトは心の中でため息をついた。

1階で店番をしているイリスは、上から聞こえてくるほほえましい会話に思わず微笑んだ。

                             〜Fin〜

後書き

遂にやってしまいました。ネフェシエルの小説です。(半ばKaiさんやイルさんに便乗してしまった節も有るような気が……)
う〜ん…。型破り過ぎた……。「古城を壊すな」とかブーイングが飛んできそうな気が……。
実はもっと悲しいオチをつけたいとも思ったのですが、没りました。
(これ以上どうしろと!?)

いや〜、他の御二方がシリアスだったのでアクセントとしてこういうのもありかな〜、
と……。(いまさら言い訳なんて、本当に見苦しいわね!!(爆))
「おもしろけりゃいいんだよ!!」
と笑い飛ばしてくれる人がいてくれたら、それだけで幸せです。

一番焦ったのは、ティララとディーヴァが罵声を交しているシーンです。
(ファンからカミソリならぬウイルスが届きそうな気が……)
『よくこんなの思いつくな〜』と他人事の様に感心してしまいました(爆)
読まれた方、私の事を「こいつ絶対ファル萌えだ」と思われたでしょうが、
そんな事はありません。むしろ私はディーヴァ派です。

つまり、好きだからこそああいう台詞が書けたわけです。
まぁ、あのシーンは少しの間筆が止まりましたが……。
(あと、決してティララを嫌っているわけでもありません。
 むしろ、決め手の一撃を食らうまでは、『ティララ良いかも……』
 と思っていたぐらいです。)


イリスが台詞無しで終わっているのに、納得いかない方もいるでしょうが、
私は、彼女に非常に重要な役をさせたつもりです。一応、暴走一直線だったこの作品を、
マジメにしめてくれたのですから。(その代わり、ミスマッチな感じがするのもまた事実かも……)

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