リトの寝ている部屋には太陽の光が鋭く差し込んでいた。
「・・・・・。朝?それとも昼?」
まだ寝ぼけている。
リトはゆっくり身体を起こした。
そして青い壺を見つめた。
「・・・ファル、出てこい。」
【ポンッ】
以外に地味な音で壺から出てきた彼女の名前は『ファル』
青のロングの髪。彼女は魔神である。
数ヶ月前、リトは宝石屋の主人に2000Gをぼられた上に、この重い壺を持たされていた。
中から出てきたのが、この少女だった。
ファルはリトの方を向き、
「みいっ!リト遅いよ〜。ファルなんか4時間前に起きてたよ?」
この部屋には時計がない。
「げっ。もうそんな時間かよ〜」
「で?今日はどこに行くの?」
「ん?えと、海岸洞窟の探索にでも行こうかなと思ってる。」
海岸洞窟は一昨日、コボルトをやっと振り切ってたどりついた場所である。
「ふ〜ん。そういえばマスターが海岸洞窟の情報もってるって、昨日リトに言っといて、
言ってたの。」
(きっとまた2000G位払わされるんだろうな・・・・・)
「あ、ああ。ありがとう。」
「みぃ!とりあえずイリスさんに挨拶してくるの!」
ファルは四時間前に起きていただけあって、すっかり元気である。
二人は部屋を出て、階段を下りていった。
トン、トン、トン・・・
タタタタ・・・
一階に下りると、
「あ!やっと起きてきましたね!」
階段の音を聞きつけて、イリスが駆け寄ってきた。
イリスはリトが居候している道具屋の店主である。
「イリスさんおはようなの〜」
「おはようというか、こんにちはというか・・・。とりあえずおはよう。ファルちゃん、
リトさん。」
(うわっ。かなりの時間らしいな。)
イリスはいつもの様に聞いてきた。
「で?今日はどちらにおでかけですか?」
「みぃ!海岸洞窟だよ!」
イリスはそれを聞いて、少し考え込んだ。そして、
「あ、あの〜、海岸洞窟に行くなら、ちょっと探してもらいたいものがあるんですけど。」
また店に出すための材料集めか?とリトは思った。
「ああ、別にいいけど、何?」
イリスは少し赤くなっていた。
「そのぉ、ら、ラビットアーマー、って言うものなんですが!」
「ラビットアーマーァ!?」
「みぃ!それ、ファルも欲しい!」
リトは聞き慣れない物に困惑してしまった。
「えぇ!?何だそりゃ!?」
イリスはもっと赤くなって、リトを突き飛ばしながら、
「とっとにかくよろしくお願いします!」
と言った。
ドッシーン☆
リトは漫画のように、華麗に外へ投げ飛ばされてしまった。
「ファルちゃん、じゃあよろしくね。」
「うん!いってくる〜!」
リトは腰を上げた。
「いててて・・・。痛っ。はぁ、とにかくまずは酒場で情報収集だな。」
ファルは頷き、二人はゲートを横切りながら酒場へ入った。
カランカラン・・・
と、いきなり、
「おぉ!寝ぼすけのおでましだぜ!」
タルバイン。
「レジーナ、今何時?」
ピリカ。
「んー。私の腹時計は11時43分。」
レジーナの腹時計は、酒場に時計がいらないほど正確らしい。
彼女の食生活が規則正しいから、と皆は言っているが、真偽は不明だ。
「おお!11時18分の記録を更新だねぇ。リト君!早速メモメモ。」
「おい、マスター!メモるなよ!」
今度はナインが
「そんな不規則な生活は冒険者としてどうなんだ?」
ナインはここに集まっている冒険者の中でも、かなりの先輩だ。
「うぇーん。(しくしく)みんなひどいよぉ。」
横から見ているファルは、
「当たり前なの。ファルはちゃんと7時半に起きてたもん。」
「ははは。ファルちゃんは早起きだなぁ」
「ほんとほんと。ね?ミルコ?」
「俺にふるなよ。」
リトは泣きながらマスターの所へ歩いていった。
席に着くと、
「で、マスター。海岸洞窟の情報は?」
マスターはにっこりとした表情で手を差し出した。
お金を払うのは百も承知の上だったが、たまには無料で教えてくれないかといつも思っている。
「・・・・分かったよ。ほら。」
リトは2000Gを差し出した。
マスターは叫び声のような大きな声で、
「いやぁ!今日は情報が四つあるんだ!特別割引で3000Gだよ!リト君!」
(くそぉ〜!!なんだこのくそ親父〜!!!)
「ん?何か私に対して思わなかったかね?」
ギクッ。
マスターは、こういうときにだけ感が鋭い。ある意味困ったさんだ。
「いえ・・・。はい。1000G。」
(シクシク・・・・・)
マスターは声高らかに、
「ありがとう!では早速、」
「まず隠し扉だが・・・・・・」
隠し扉の話が終わると、
「と、あと二つだな。一つ目は人魚の洞窟の奥には、ほら、ファルちゃんのと同じ様な壺が
あるという。多分、噂の魔神の壺ではないかと言われている。」
ファルは不思議そうな顔でマスターの話を聞いている。
「みぃ?その壺、何色??」
「ん〜・・・・。確か赤やピンクっぽい色だったとかそうじゃなかったとか・・・」
(ふみぃ・・・分かんないや・・・)
マスターはまた喋りだした。
「後一つ、これは何だか変な話なんだが、イカの洞窟の方には友好的なセイレーンがいると
どこからか聞いたな。」
「友好的なセイレーン?」
「ああ。なんか知らないが、襲ってはこないそうだ。」
リトは、マスターの言うことを全て脳にインプット(?)した。
そしてイリスの事を思い出して、
「そうだマスター。あんた、ラビットアーマーのことってしってるか?」
「ラビットアーマー?そんなのが海岸洞窟にあるのかね?」
リトはがっくりと項垂れた。一応約束したからにはイリスの所へ持ち帰らないとどうしようも
ない。
「あ、海岸洞窟にあるなら詳しい奴がいるよ!」
「本当か!?」
「おーい!ミルコとグレイス!ちょっと来い!」
マスターの声を聞きつけたミルコとグレイスはリトとファルの方へ寄ってきた。
「何の話?」
この茶髪でセミロングの髪の女性が、『グレイス』
隣にいる金髪で髪をあげている男性が『ミルコ』
「ラビットアーマー、と言うものなんだが。」
ミルコとグレイスは顔を見合わせた。
それはそうだとリトは思った。いくら海岸洞窟に詳しいと言っても、アイテムの名前がアイテ
ムに貼り付いている分けがないからだ。
「どんなものなんだ?」
ミルコはリトに問いかけた。
「それが・・・」
分からないんだ、とリトが言おうとしたその時、
「ファルは多分、うさぎさんの着ぐるみみたいなものだと思うの!」
「え゛」
(そんな訳ないだろ〜!!!)
ところが、グレイスははっとしたように、
「そういえば前、どこかの洞窟に入っていったとき、それを持ってるセイレーン見たいのが
いたわ。」
「セイレーンって、さっきマスターが話してたのか?それなら話は・・・」
ミルコは手をかざして、
「ちょっと待て。でも馬鹿高かったんだぜ。そのラビットなんとかってやつ。」
「えぇー!いくらだ?」
「忘れちゃったけど、宝石屋さんのゲートクリスタルくらいびっくりしたわ。」
(ゲートクリスタルって、20000Gだよな?)
「でも、イリスと約束しちゃったぜ?どうするかな?」
ミルコとグレイスは、決まってるじゃん!とでも言うような顔で、
「そしたら、俺達といかないか?そしたら敵を倒しまくれば、そのうち金だって貯まるって!」
「そうね。私たちももう一回そのセイレーンの女の子に逢いたいし。」
ファルも参戦して、
「みぃ!そうするの〜!」
・・・・・いつの間にいろいろ決まってしまった。
そういうことで、リトはファルと、ミルコとグレイス達と一緒にラビットアーマーを探す
旅(?)に出ることになりました。